第2回「DMO全国フォーラム」第2日目は、今回のフォーラムのもうひとつのメインテーマである「人材」について議論が行われた。
はじめに、北海道大学観光学高等研究センターが昨年度から取り組んでいる「デスティネーション・マネージャー育成プログラム」の概要について、石黒侑介准教授から解説が行われた。
このプログラムはノンクレジットであるが、北大・国際広報メディア・観光学院(観光創造専攻)の正規科目も受講でき、国際広報メディア・観光学院および観光学高等研究センターが連携する道内自治体においてのフィールド型演習も組み込まれている。観光資源の発掘から、実際の誘客に至るまでの観光地域づくりの専門知識を身につけ、地域の現場で活躍できる実践的な人材の育成を目指している。
受講対象は、日本版DMOに携わる人材に加え、観光関連団体(観光協会・事業者組合・商工会・NPO等)の中核人材や、行政の観光関連部署に所属するなど社会人を想定。講義は主に夜間や休日等の集中講義形式となっており、観光の現場で活躍する現役の人材が受講しやすい枠組みにしてあり、このプログラムを修了すると「履修証明書」が交付される。
続いて、京都大学経営管理大学院において開校される「観光MBAコース」について、前川佳一特定准教授から説明が行われた。
京大では北大とは異なり、修士課程の正規学生を対象に観光MBAが学べるプログラムとなっており、ここでも座学だけではなく、京都の寺社の経営や寺社を取り囲むその周辺地域の観光地域マネジメントに関して実習形式で学ぶカリキュラムが組まれている。従来の経営学の分野ではDMOという組織の経営を学ぶことは可能であったが、ここでは組織経営とは理屈が異なる「観光を活かした地域経営」、つまりデスティネーション・マネジメントやデスティネーション・マーケティングを学ぶことができる。
これら大学・大学院でのプログラムに関するプレゼンに引き続いてのパネル討議では、観光庁で人材育成を担当する観光資源課の太田雄也課長補佐から観光庁の人材育成の方針について説明が行われた。観光庁では、観光産業を国の成長に資する基幹産業と位置づけ、観光立国を目指すために「観光産業をリードするトップレベルの経営人材」「観光の中核を担う人材」「即戦力となる地域の実践的な観光人材」といった各層の人材育成の方針を有している。
(まとめ)
観光地域づくり分野における専門性の高い人材を育成する教育プログラムを考える場合、「入口」(観光地域づくりの現場で活躍したい人材)と「出口」(活躍する場)の両方が揃わないと継続的な取り組みは難しい。さらに、その中間に位置する「教育プログラム」に関しては、わが国では観光地域マネジメントそのものが新しい分野であることもあり、その育成メソッドが十二分に体系化されておらず、現時点では、理論を学ぶ座学にフィールドでの演習を組み合わせる学習形態が基本形となっている。
こうした「入口→学び→出口」という視点からDMOの未来を考えると、DMOのCEO/COOやCMOを担いたいという人材を集め、それら人材が良い待遇で迎え入れられる憧れの職場をDMOが提供できるようになることが必要要件であり、さらに、その中間に位置する「教育プログラム」に関して、今後スピード感をもって研究開発に取り組むことが必要と言えるだろう。
なお、今回の議論から、高等教育機関の教育プログラムづくりで参考になるのは、北大のカリキュラムのようにフィールド型演習を組み込むことで、演習先地域における人材需要に受講者が応えていくといったケースが生まれてくる可能性について、さらに検討・改良していくことが重要ではないだろうか。(大社)